資本主義の暴走を許したのは、あなたであり、私である 2008-10-07
題名が示すように、「最近の資本主義は常軌を逸しているのではないか」という基本認識から本書はスタートします。
では、なぜ資本主義は暴走してしまったのでしょう。
最近読んだ『格差はつくられた』では、「要するに共和党の“保守派ムーブメント”が悪いのだ」と犯人を示してくれました。しかし、本書著者のライシュは違います。
資本主義の暴走を許したのは、あなたであり、私である。
消費者としてのあなたが少しでも安いものを求めるから、また投資家としてのあなたが少しでも株主利益の多い投資先を求めようとするから、企業は従業員の給料を減らし、有能な経営陣に高額な報酬を与えるようになるのだ。
――これがライシュの答えです。
具体例として、ライシュは自宅近くの個人書店のケースを示しました。
何年も前から地元の個人書店をひいきにしていたライシュですが、ある日自分の本棚が、大型書店やアマゾンで買った本ばかりになっていることに気づきます。近所の個人書店に足を運ばなくなっていたのです。
ライシュ一人のせいではありませんでしたが、とうとう個人書店は閉店してしまいます。
苛烈な資本主義への道を後押ししているのは、消費者や投資家としての自分自身だったとは……。
誰のことばか忘れましたが、
「他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない」
との戒めがあります。
知らず知らずのうちに、他人の不幸の上に自分の幸福を築いてしまう社会システムは、何とかしなければなりません。
しかし、自分一人が消費者としてわざと割高の商品を買ったとしても、何の解決にもなりません。
ライシュの示す解決策は、「購入や投資を個人的な選択ではなく社会的な選択にする法律や規制を作ること」です。日本でも最近よく耳にする、行きすぎた「規制緩和」を元に戻そうという意見と同じ潮流なのかもしれません。
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